R.M.さんの場合
※2021年12月現在の情報です。
小さな商店やビルの街並み、ショーウィンドウの奥にブラウン管がずらりと並んでいた光景が、鮮烈に脳裏に焼き付いている。
いくつもの番組が放送されているテレビの前によく立ち止まっては「どんなことをする場所なんだろう」と好奇心いっぱいに大きなビルを眺めていた。
幼い頃は、割と大人しめな性格で、ひとりで過ごす時間も多かったが、体を動かすことも好きだった。
幼稚園の運動会では、いつも一等賞。一際目立った存在だったと両親も誇らしげな様子だった。
小学生になっても大人しい性格は変わることはなく、放課後は外で友達と元気に遊ぶよりは、家の中でゆっくりと過ごす時間が好きだった。
家の中では、テレビを見て楽しむのが日課だった。
テレビに出演する人は自分とは真逆の性格であったが、いつも自分を笑顔にしてくれたり、心踊らせたりしてくれる人達に
自然に興味を抱くようになった。
大人しめな性格ではあったものの、誰に対しても平等で優しい、友達付き合いが上手い子だったと両親は言う。
学校で1人で過ごしている子を見つければ、率先してその子に声を掛けるようにしていた。「1人じゃないよ」という気持ちが伝わって欲しかったし、人と接することに、他人の意見は関係ないとも思っていた。内気な性格の中にもしっかりと自分は持っていた。
得意なことを活かして自信に繋がることをさせたいという親の考えから、今の私を語る上で欠かせない、ソフトテニスを
始める事になる。元々運動が好きだった私にとってソフトテニスはとても楽しく、来る日も来る日も練習に打ち込んだ。
中学生の時には部活後にテニススクールに行き練習、休日も指導者の所へ行き、個別練習。
結果を求め、人並み以上の努力をした。簡単には結果が出なかったが、ライバルに勝つために多くの時間をテニスに費やした。
やがて努力が実を結び、高校時代には全国大会に2度出場し、3年生の時には宮崎県代表のキャプテンとして国体に出場するまでに成長した。
テニスはチームスポーツ。テニス以外の事もたくさん学ぶ事が出来たし、何より自分に自信を持てるようになっていた。
両親の喜んだ顔は今でも忘れられない。
テニスで大学に進学する選択肢もあったが、地元が好きな私にとってこの街を離れる選択肢はなかった。
学生時代に就職活動で悩んでいた頃、事務職を希望し様々な会社を受けていた。
幼い頃から、様々な作業を着々と進めることが好きだったこともあって、自分自身で事務職が向いていると感じていたからだ。
そんな時に手にしたのがBTVの求人票だった。幼い頃のBTVへの記憶が一気に蘇り、「ここで働いてみたい」と強く思った。もちろん事務職希望で応募をした。
面接会場に足を運び、かつてない緊張感が漂ったが勇気を持って扉を開いた。面接では事務職採用で話が進んでいた。
「制作部の仕事に興味はないですか?」
と1人の面接官から質問があった。想像もしていなかった質問だったにもかかわらず、
頭の中は「チャンスだ」という気持ちでいっぱいで、気が付くと「はい、興味あります!やってみたいです!」勝手に口が動いていた。
「え?わたしでもできるのかな?」と不安な気持ちが少しあったが、
否定的な感情なんて一切なかった。私は運が良いなと感じたくらいだった。不安よりも喜びと制作の仕事への期待感の方が強かったからだ。
この面接官の一言が人生の分岐点となる。
入社してからは、必死な毎日だった。
制作部に活かせる知識なんて1つもない。周りを見渡せば、輝いている先輩ばかり。
先輩社員のレベルの高さに圧倒されて、自信を失うこともよくあった。
きつい事や辛い事もたくさんあった。でも、絶対に逃げなかった。
逃げたくなかった。
日々の業務の中で先輩達の技術を1つ1つ学び、少しずつではあるが実力をつけていった。
休憩時間や移動中でも常に頭では取材のイメージを行う。無駄を省き、効率よく業務をこなしていく。
未知の世界の職業だったからこそ、ここまで没頭できたのかもしれない。
制作の業務には形のないものを作り上げる楽しさがある。
それは、自分が興味のあること、伝えたいことをテレビ放送で視聴者に届ける事ができるところだ。
放送後にも、周囲からのリアクションがあるとたまらなく嬉しかった。
数年後には、街を歩けば声を掛けられたり、手を振られたりする様になっていた。
そんな地域の方々の温かい言動が励みとなり、自ずと自信がついていた。
そして「地域の方々の期待に応えたい」とより一層感じるようになっていた。プレッシャーを感じる事がなかったのも、真の楽しさや、やりがいを感じられる様になっていたからだと思う。
現在では、地域の魅力を番組を通して発信している。この”都城”という街をたくさんの人々に知ってもらいたい。
制作の業務には正解はないと思っているが、だからこそ自分にしかできないことがあるとも感じている。
入社当初の思いを忘れず、今日も地域に情報を伝えたい。
友人と過ごす時間を大切にしている。
広い海を見渡せば、自分の悩みなんてちっぽけに感じる。
そんな場所で、他愛もない会話や思い出話で友人と盛り上がり、
時間を忘れ、少しだけ学生時代に戻った気持ちになる。
気分をリフレッシュした後は、アパレルショップで買い物する時間も好きだ。
経験の無い分野に挑戦してから13年が経過した。
変化する時代の流れと共に、会社の方針なども少しずつ変わってきている。まさに、今がその変わり目だと思う。
作り上げてきた過去を改革することは容易ではないが、
将来を見据えて土台を見直し練り上げて、少しずつ手を加えなければ。
これからの地域の笑顔の為に。